先に答えると:γ-ウンデカラクトン(CAS RN 104-67-6)は、分子式C11H20O2のラクトンです。食品添加物規格は「モモようのにおい」と記載し、JECFAの資料には「Aldehyde C-14 pure (so-called)」という別名が載っています。別名だけでアルデヒドやC14の分子と判断しないことがポイントです。
C11のγ-ラクトン
厚生労働省の食品添加物規格では、γ-ウンデカラクトンの分子式をC11H20O2、化学名を5-Heptyldihydrofuran-2(3H)-one、CAS RNを104-67-6としています。ラクトンは化学構造の分類名で、名前にある「ウンデカ」はこの分子が炭素11個を含むことと対応します。
ここで示したのは、同定に使える化学情報です。香りの印象や、特定の香水にその成分が配合されているかどうかとは別の情報です。
「Aldehyde C-14」は慣用的な別名
JECFAの評価資料は、gamma-undecalactoneの同義語のひとつとして「ALDEHYDE C-14 PURE (SO-CALLED)」を挙げ、機能分類を香料(flavouring agent)と記載しています。厚生労働省の規格で確認できる式はC11H20O2です。そのため「C-14」を炭素数や分子式と読むのは誤りで、物質を確かめるときはγ-ウンデカラクトン、CAS番号、分子式を使うのが確実です。
「桃のよう」は素材の香りの説明
厚生労働省の食品添加物規格は、試験対象の性状を「無~淡黄色の澄明な液体で、モモようのにおいがある」と記しています。Kaoの原料情報では、香料や食品香料の用途と、フルーティー・アプリコット様という特徴が紹介されています。どちらも素材や規格の説明であり、天然の桃の香り全体や、市販香水の完成した香りをそのまま表すものではありません。
「ピーチ」と書かれた香水や香料の説明だけから、この成分の配合や量を特定することもできません。公開された成分表示やメーカー資料に書かれている範囲を確認してください。
桃の研究では複数成分のひとつ
2022年の複数品種の完熟桃を調べた研究は、10種類のラクトン揮発成分を報告し、その中にγ-ウンデカラクトンを含めています。一方、同じ研究ではγ-デカラクトンとδ-デカラクトンが比較的頻繁に検出され、γ-デカラクトンは対象品種の多くで桃様の香りへの普遍的な寄与を示しました。したがって、この論文はC11が桃の香気研究に登場する根拠にはなりますが、すべての桃でC11が主役だと示すものではありません。
γ-デカラクトン(C10)との違い
- γ-デカラクトン:C10H18O2、CAS RN 706-14-9。桃の香気研究と品種・試験条件はこちらの記事で扱います。
- γ-ウンデカラクトン:C11H20O2、CAS RN 104-67-6。「C-14」の別名や桃のような香りの読み方がこの記事の対象です。
名前が似ていてどちらも桃様の文脈で語られますが、異なる化合物です。γ-デカラクトンについては品種や成熟条件ごとの研究記事、桃の香気全体については複数の成分を扱う解説をご覧ください。
資料を読むときの確認点
- 「Aldehyde C-14」という別名だけでなく、CAS番号や分子式で物質を照合する。
- 食品添加物規格・香料原料カタログ・桃の果実研究は、それぞれ対象と用途が異なる。
- 原料の香りの説明から、完成品の処方や肌への効果を推定しない。
参考文献・出典
- 厚生労働省「食品、添加物等の規格基準」γ-ウンデカラクトン食品添加物規格に記載された化学名、分子式、CAS RN、性状。
- JECFA Evaluations: gamma-UNDECALACTONE同義語「Aldehyde C-14 pure (so-called)」と機能分類の記録。
- Zhang et al. (2022), Characterization of the Lactone Volatile Compounds in Different Types of Peach複数品種の完熟桃でラクトン10成分を調べた一次研究。
- Kao Chemicals, GAMMA UNDECALACTONE原料カタログの香料用途と香りの説明。完成品の処方を示す資料ではない。
- PubChem, Gamma-Decalactone (CID 12813)比較対象のγ-デカラクトンの分子式とCAS RN。