先に答えると:δ-デカラクトン(CAS RN 705-86-2)は、分子式C10H18O2のδ-ラクトンです。γ-デカラクトンと分子式は同じでも、環の大きさと原子のつながりが異なります。日本香料工業会が公開する香粧品用香料の資料では、δ体に「Cream, Nut Note」という記述があります。
同じ分子式でも、構造は別
PubChemの化学データでは、δ-デカラクトンのIUPAC名は6-pentyloxan-2-one、γ-デカラクトンは5-hexyloxolan-2-oneです。どちらもC10H18O2ですが、CAS RNもδ体は705-86-2、γ体は706-14-9と異なります。PubChemの構造名を比べると、δ体は6員環、γ体は5員環を持つ別々の環状エステルだと確認できます。
| 比較項目 | δ-デカラクトン | γ-デカラクトン |
|---|---|---|
| 分子式 | C10H18O2 | C10H18O2 |
| CAS RN | 705-86-2 | 706-14-9 |
| 環構造 | 6員環(oxan) | 5員環(oxolan) |
| 香料資料の記述 | Cream, Nut Note | Peach, Cream Note |
香りの記述は資料の文脈と一緒に読む
日本香料工業会が公開する2001年発行の「周知・慣用技術集 香料 第III部 香粧品用香料」は、δ-デカラクトンを「Cream, Nut Note」、γ-デカラクトンを「Peach, Cream Note」と記しています。これは同資料の調香用素材の記述です。すべての人や濃度、組み合わせで同じ印象になるという意味ではなく、香りを単語ひとつで固定することもできません。
香粧品用香料の技術資料にある用途
同資料はδ-デカラクトンをGardeniaやTuberoseなどの調合香料の変調剤として挙げ、多くの香粧品に使用される素材と説明しています。これは2001年発行資料に記載された原料用途の例です。現在の個別製品や特定ブランドの配合を示すものではありません。
桃の研究は、桃の試料についての結果
2021年の桃の香気研究では、風華玉露(Fenghuayulu)系統の特定試料で、δ-デカラクトンとγ-デカラクトンが複数の主要な香気活性成分の中に報告されました。これは果実の複合的な香気を調べた研究であり、δ体ひとつが桃の香り全体を決めることや、桃様の香水に配合されていることを示す結果ではありません。研究条件の詳細はγ-デカラクトンの桃研究記事、複数成分の読み方は桃の香気成分の記事で扱っています。
識別情報から分かること、分からないこと
- CAS RNと構造名で、同じ分子式のγ体とδ体を区別できます。
- 香料技術資料の香りの言葉は、原料の説明や調香用途を読む手がかりです。
- 成分の記述だけから、完成した香水の処方・香り方・持続時間は特定できません。
ラクトンの基本定義はラクトンの基礎解説をご覧ください。
参考文献・出典
- PubChem, delta-Decalactone (CID 12810)分子式、CAS RN、IUPAC名、構造情報。
- PubChem, Gamma-Decalactone (CID 12813)比較対象の分子式、CAS RN、IUPAC名、構造情報。
- 日本香料工業会「周知・慣用技術集 香料 第III部 香粧品用香料」(2001)γ体・δ体それぞれの調香用香りの記述と、δ体の香粧品用途例。
- 日本香料工業会「特許庁公報 周知・慣用技術集(香料)」掲載案内香粧品用香料編の発行日と公開資料についての案内。
- Niu et al. (2021), Characterization of the major aroma-active compounds in peach風華玉露系統の桃の特定試料を対象にした香気活性成分の一次研究。